INTERVIEW
「遊びの講義」第二回目にして早くも特別編。
BBQ大学学長の田中直樹が尊敬してやまないという日本バーベキュー協会会長の下城民夫さんに初めて会ってきました。世界中を飛び回ってきた下城会長だからこそ知り得るバーベキューの魅力。田中学長がたっぷりとお話をうかがいました。

 

【プロフィール】

下城民夫さん
日本バーベキュー協会会長
1960年生まれ。大手広告代理店勤務を経て、1992年に日本初のアウトドア専門通信社「アウトドア情報センター」を立ち上げ、世界中の国や地域を取材で飛び回る。海外に比べて日本のバーベキュー文化の質が低いことを痛感し、2006年に「日本バーベキュー協会」を設立。以来、協会の理念である「スマートバーベキュー」の提唱や、日本初のバーベキュー関連資格「バーベキュー検定試験」の開始、さらには人材育成など、あらゆる面でバーベキュー文化の発展に貢献し続けている。

 

(前編からの続き)

 

人を喜ばせて自分も喜ぶための「バーベ九則」

 

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田中学長「日本バーベキュー協会では、バーベキューをおいしく手軽に楽しむための『スマートバーベキュー』を提唱していらっしゃいますね。具体的にどういうことなんでしょう?」

 

下城会長「『バーベ九則』と題して、一から九までバーベキューの流れに沿って心構えを説いています。『一、下調べは慎重に』『二、準備はお家で』『三、降らずとも雨の用意』『四、焼ける前に一品』『五、食べ物を炭にするべからず』『六、子供相客に心せよ』『七、飲んだら運転しない』『八、ごみ炭は埋めない捨てない』『九、来た時よりも美しく』。

 

これらは、千利休が茶道におけるおもてなしの心得を述べた『利休七則』を参考にしたんですね。そもそもバーベキューというのは、おもてなしの場でもあるわけです。実は茶道とバーベキューはそっくりで、どちらも人を喜ばせて自分も喜ぶ遊びのようなものなんです」

 

田中学長「確かに、『おいしい!』と言われたら自然と笑顔になります」

 

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下城会長「それは人間の本能でしょうね。たとえば『四、焼ける前に一品』は、まさに人を喜ばせるためのもので、調理に時間のかからない料理をまず振る舞う。バーベキューに来て、一番お腹が空いているのは最初のときでしょう? 

 

そこに何か一品出てきたら、『あ、この人は気が利くな』となる。スナック菓子でもいいんだけど、それだと相手の心に響かない。カナッペやブルスケッタなど、簡単に作れるフィンガーフードがいいと思いますよ」

 

田中学長「『六、子供相客に心せよ』というのは何ですか?」

 

下城会長「よく親御さんは、『料理ができるまで、どこかへ行って遊んでおいで!』などとお子さんに言うけれど、子供は親の役に立って褒められたいわけです。だから、子供が活躍できる場を作ってあげる。バーベキューというのは、赤々とした炎を高く出してはいけないんですね。

 

炭火から放出される遠赤外線であぶり焼きにするのが基本で、だから何でもないパンを一枚焼いただけでもおいしく仕上がる。肉の脂が滴ると炎がぶわっと出てきますが、そのときに水鉄砲で消す係なんかを与えるといいですよ。『どこかへ行って遊んでおいで!』と言って追い出さずに、『炎は敵だからやっつけてね』と、目の前に遊び場を設けてあげて、大事な仕事を任せる」

 

田中学長「シューティングゲームみたいで楽しいでしょうね」

 

下城会長「要するに、暇そうな人を作らないことが大切。子供も大人も、そこに居合わせた人みんながお客様で、互いに気遣って気持ちのいい場にしていこうということです。気持ちのいい場で言えば、『二、準備はお家で』もそうで、これはゴミを出さない工夫の一つです。

 

スーパーでパックに入ったお肉を買った場合は、そのプラスチック製のパックを外して行く。野菜の皮やヘタ、種など、いらない部分は捨てて行く。食材はそのまま持って行ったほうが、現地で料理している感じが出て楽しいという意見もあるでしょうけれど、楽しいのは最初だけ(笑)。

 

焼くだけの状態にして持っていけば、向こうで出るゴミが少なくなるのでオススメです。あと、もともと自然のものだからという理由で炭を土に埋めていく人がいますが、これは大問題で、炭は自然に還りません。分解されずに何億年も残る。

 

だから、『八、ごみ炭は埋めない捨てない』ようにして、『九、来た時よりも美しく』という心構えでバーベキューを楽しみたいものです」

 

田中学長「『バーベ九則』は、どれも難しいことではないですね。すぐに実践できそうです」

 

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下城会長「考え方として、今までの宴会型、発散型のバーベキューから、一歩外に出ればいいだけの話です。日本と世界のバーベキューの違いは、肉を見ているか人を見ているかで、日本人は肉ばっかり見ている(笑)。

 

もっと人を楽しませるということに力を注げば、文化としても産業としても、バーベキューが充実したものになるはずです。そういう僕らの考えを広く知ってもらうために、『バーベキュー検定試験』を始めたんです」

 

田中学長「私の知り合いに、会社でバーベキューやるから検定を受けてこいと、上司に言われた人がいました。無事に合格したようです」

 

下城会長「検定には初級と上級の2種類あって、初級は手際よく炭をおこして、肉が上手に焼けるレベルを目指します。そこで約2時間の講義と実習を経て実施される筆記試験に合格すれば、インストラクターとして認定するというものです。今、試験を受ける半分近くの方が、田中さんのお知り合いのようにビジネス関係の理由でいらっしゃいます」

 

仕事も遊びも、真剣に取り組まないと面白くない!

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田中学長「そうして合格された方の中には、地方でバーベキュー協会を設立される人もいらっしゃるそうですね」

 

下城会長「今、地域協会は全国に44あります。日本バーベキュー協会の支部というわけではなく、僕らが認定した独立団体。彼らは彼らで独自のイベントを主催しています。フルーツバーベキューをやったり、島コンバーベキューをやったり」

 

田中学長「すっごく楽しそうですね! ここだけの話ですが、私は合コンが大好きなんです(笑)」
※学長は既婚です

 

下城会長「僕は、バーベキューの最たるものが合コンだと思っているんですよ。人は何を求めてバーベキューに参加するのか。みんな、友達を作りに来ているんですよね。出会いを求めている。だから、色気のないバーベキューはバーベキューではない、というのはちょっと言い過ぎだけれど、自分をよく見せたいとか、モテバーベキューみたいなスタイルとかは、僕はありだと思っている。でも、その場合に男の子は、カッコよくバーベキューをやったらダメなんです。それだと女の子に使われるだけ」

 

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田中学長「そう言えば、私も都合のいい存在だったような……」

 

下城会長「昔で言う、アッシー君とかメッシー君とかだね(笑)。あと、ジャージを着てきたらダメ。バーベキューにも、ドレスコードあると考えたほうがいいですよ。ドレスコードは、雰囲気を乱さない服装のルールで、場を作ることでもあります。近所のコンビニに行くようなかっこうは避けて、楽しい場にしたいものです。

 

バーベキューはパーティー文化だと言いましたが、パーティーは同じ仲間で続けるものではないですよね。いつもメンバーが一緒だったら、ケンカになったり、いない人の愚痴をこぼすようになったりする。日本人は何度も同じ人と会うでしょう。濃いコミュニケーションはできるけれども、外の人間とのコミュニケーションは苦手。初対面の人と何を話したらいいか分からない。

 

でも、パーティー文化に慣れている外国人は逆で、会ったことのない人と会う回数が多い。そこで、人に合わせるところから入っていく。『今日、いい服着ているよね』などと、さらっと褒める。ほんと上手ですよ」

 

田中学長「彼らは、仕事と遊びをうまく切り替えている印象です。下城会長もそのようにして、人生を楽しんでいらっしゃるとお見受けしますが」

 

下城会長「こんなこと言うと『あいつアホやな』って思われるんでしょうけれど、仕事と遊びは同等なんですよ。日本ではどちらかと言うと、仕事がメインですよね。遊ぶのはバツが悪い。僕は、よく学びよく遊べという言葉が好きで、でもその遊びというのはレスト、つまり休憩じゃないんです。レジャーなんですよ。仕事も遊びも、真剣に取り組まないと面白くないというのは常々感じています」

 

田中学長「今日はお忙しいなか、貴重なお話をありがとうございました。お会いできてとても嬉しかったです」

 

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BBQ公認ライター

佐藤克成

バーベキューのすばらしさ、おいしさを世に伝えるために生まれてきたといっても過言ではない。勿論、三度の飯よりバーベキューが好き。編集協力した書籍に『いますぐ使えるオートキャンプ完全マニュアル』『大満足のバーベキュー料理80』(ともに太田潤著、大泉書店刊)など、BBQ一色の人生。